営業力強化を考える
当研究所では、企業経営にとって常に大きな課題として掲げられる「営業力強化」を、営業組織改革を通じて支援させていただいております。
本ページは、「営業力強化」に取り組まれている企業様にとって有益な情報をシェアすることを目的に設置しました。
ぜひ貴社の営業力強化の一助になれば幸いです。
営業力強化研究所長 脇 穂積
営業力強化とは
企業経営者にとって「営業力強化」は永遠のテーマです。
様々な機関が行う調査でも、企業経営者にとって「営業力強化」は常に上位課題として挙げられています。
それでは「営業力強化」とは、具体的に何をすれば良いのでしょうか?
営業を大きな流れで捉えると、「集客」「クロージング」「顧客フォロー」の三段階のプロセスで構成されています(下記図表参照)。
営業力強化とは、この3つの段階において、「集客」数と「クロージング」率を最大化させ、かつ「顧客フォロー」によって流出顧客を最小化することだと言えます。
これから、「集客の最大化」「クロージングの歩留り向上」「流出顧客の最小化」に関する手法について、具体的に検討してまいります。
2013年11月9日
営業力強化とは(理念編)
なぜ企業は「営業力強化」を強化しなければならないのでしょうか?
あるいは質問を変えてみましょう。
あなたの会社には、「営業力強化」は必要なのでしょうか?
そもそも何故御社の商品やサービスを、営業力を強化してまで拡販する必要があるのでしょうか。
それは儲けの為でしょうか。
もちろん会社経営のためには「儲け」は重要です。
しかし、「儲け」だけを考える企業の商品やサービスを、愛してくれる顧客はそれほど多くはありません。
既にご利用いただいている顧客にとっても、そしてまだ見ぬ潜在顧客にとっても、心の底から自社の商品・サービスが必要であると考えていなければ、拡販する必要などありません。それはつまり、「顧客」にとって有益であるという自信がある状態になければ、営業力を強化する必要などないともいえるのです。
非常に逆説的ではありますが、これは重要な理念です。
経営者自身、そして現場の営業マネジメントや営業担当者達が、自社の商品・サービスが「どんな顧客の、どんな困りごとに役立つのか」について、真剣に議論し、理解していなければ、営業力強化など単なる小手先の技術論で終始してしまいます。
まずは、顧客にとって自社商品・サービスはどのように役立つのか。
これを徹底的に考え、議論することで、常に顧客にとって価値ある商品サービスを提供し続けることこそが、営業力強化の基本理念なのです。
2013年11月10日
集客の最大化(潜在顧客をどうやって顕在顧客に転換させるか)
営業力強化と言うと、ほとんどの場合、営業プロセスにおける「クロージング」のみにフォーカスされます。
書店で数多く見かける「トップセールスが教える…」的なタイトルの書籍は、ほぼこの点に関する解説書と思えばいいでしょう。
しかし「営業力強化とは」でも書きましたが、営業力とは、営業プロセス(集客、クロージング、顧客フォロー)全てを強化することであり、総合的な取組なのです。
ここではまず、営業プロセスの第一段階でもある「集客の最大化」にフォーカスして議論を進めましょう。
上記の図に示していますが、集客とは、「潜在的な顧客」を様々な方策を用いて「顕在化」させる作業といっても過言ではありません。
しかし、この「潜在的な顧客」、正確には二つの異なる種類の顧客が存在しています。
ひとつは、貴社が解決策を提示できる課題を持ってはいるが、その課題に全く気付いていないため、例え広告宣伝活動を行って情報を届けたとしても、スルーしてしまう「筋金入りの潜在顧客」。
そしてもうひとつは、貴社が解決策を提示できる課題を、課題として認識してはいるが、解決しようとするモチベーションに欠ける「優柔不断な潜在顧客」の二種類です。
集客で重要なポイントは、この「優柔不断な潜在顧客」の背中を押してあげる情報を、如何に適切に届けていくかなのです。
これは、「恋愛」に例えるとわかりやすいかもしれません(笑)
優柔不断な潜在顧客とは、きっかけさえあればいつでも恋がはじまる男女のようなものです。
彼らは恋愛をしたいと思っているわけではありません。しかし、なんらかのきっかけがもたらされた瞬間、恋がしたい、恋人が欲しいと思うようになります。
ここで重要なのは、恋がしたい、あるいは恋人が欲しいと思う「きっかけ」なのです。
営業力強化で重要なのは、この変化をもたらした「きっかけ」を、過去恋愛関係になった、もとい取引している顧客から情報収集することに尽きます。つまり、「優柔不断な潜在顧客」の背中を押してあげる「きっかけ」情報を、過去の恋愛遍歴(既存顧客との取引ストーリー)から収集することが重要なのです。
こうして収集した「きっかけ」データ(ストーリー)をどのようにすれば、適切に彼らに届けることが出来るのか。
次回は、情報を届ける方法について具体的に検討していきます。
2013年11月11日
集客の最大化(潜在顧客にどうやって情報を届けるか)
皆さんはインバウンドマーケティングという言葉を聞いたことがありますか?
インバウンドマーケティングとは、検索行動が普通のものとなりソーシャルメディアが普及した今、人々は自分にとって役立つ情報を積極的に探し、友達と共有しています。素通りする人を無理やり振り向かせるのではなく、自分たちに興味をもってくれる人から「見つけられる」ことにフォーカスしたマーケティング手法のことをインバウンドマーケティングと呼んでいます。どうでしょうか、イメージできましたか?説明って難しいですね…(笑)
もし興味があれば、こちらの本をご覧いただければと思います。
このインバウンドマーケティングこそ、前回記事にした「集客の最大化(潜在顧客をどうやって顕在顧客に転換させるか)」で、「優柔不断な潜在顧客」の背中を押してあげる情報を、如何に適切に届けていくかの「核心」となります。
通常、皆さんも何か困ったことがあったときには、まず「検索」しますよね。
もちろん明確に必要な「もの」が決まっていれば、ダイレクトに検索キーワードとして打ち込めますが、困っている出来事がどうやって解決できるかわからない状態の時でも、様々なキーワードで検索を行います。
この、ちょうど「潜在」と「顕在」の中間地帯に位置した人たちに、如何に「見つけてもらうのか」、そして見つけてもらったあと、その人たちに具体的な解決方法を提案することで、「見込み顧客」に転換していくのです。
ここで重要なのは、自分たち自身がこれまで営業を行う上で起点としている「商品知識」や「性能」などは、特に役に立たないという点です。なぜなら、こうした検索行動を行っている人たちにとって、貴社が提供する商品サービスは解決策をもたらす選択肢のたった1つに過ぎないからです。
彼らは、彼ら自身が抱えている「問題」を解決したいだけなのです。
そういう意味では、1968年にT・レビット博士が発表した「
マーケティング発想法
」に記述している、「昨年、4分の1インチ・ドリルが100万個売れたが、これは人びとが4分の1インチ・ドリルを欲したからでなく、4分の1インチの穴を欲したから」という言葉がその理解を促してくれます。
つまり、顧客の持つ「問題」を、貴社(営業担当者)が知らなければ、彼らに「見つけてもらう」ことは出来ないのです。「見つけてもらう」ことが出来なければ、貴社の商品サービスは、この世に存在しないのと同義なのです。
そういった意味で、貴社がまず「集客の最大化」のために行わなければならないのは、既存顧客が、なぜ貴社の商品サービスを取り扱うことになったのかの起点となった「問題」を知ることからなのです。
2013年11月12日
集客の最大化(どのような情報を顧客に提供すべきか)
先の記事で、集客を最大化するためには、既存顧客がなぜ貴社の商品サービスを取り扱うことになったのか、起点となった「問題」を知ることが重要だと述べました。
実は、この顧客の「問題」を知るという行為、これまでほとんどの企業が手を付けずに来ています。
その証拠として、次の表を提示します。
この表は、2012年の広告宣伝費と市場調査費を比較したものです。
これが意味するのは、企業が顧客に対して商品・サービスを「知らせる」のに費やした費用に較べて、顧客が何を欲しているかを「知る」ために費やした費用はたったの3%に過ぎないという事実です。
つまり企業は、これまで、顧客の声を「知る」ことにはほとんど関心を払ってこなかったのです。
現実問題として、顧客の購買目的や購買行動を知らずに、企業が商品・サービスを販売することなど可能なのでしょうか?ましてや現状販売している商品・サービスに対する顧客からの評価を知らずに、継続的に顧客との取引を拡大していくことなど可能なのでしょうか?
はっきり言ってそのようなことは不可能でしょう。
そもそも、顧客にとって商品・サービスを購入することは「目的」ではありません。
それはあくまで「手段」であって、購入を通じて自身のニーズを満たすこと、つまり顧客が抱えている何らかの「課題」を解決することが目的なのです。
まさにこの、「顧客が抱えている何らかの課題」を、購入した商品・サービスによってどのように解決出来たのか、の事実こそが、顧客の本当に求めている情報なのです。
2013年11月20日
集客の最大化(問題を売る)
集客の最大化(潜在顧客にどうやって情報を届けるか)では、T・レビット博士の次の言葉を取り上げました。
その言葉とは、「昨年、4分の1インチ・ドリルが100万個売れたが、これは人びとが4分の1インチ・ドリルを欲したからでなく、4分の1インチの穴を欲したから」という、『マーケティング発想法』で記述した有名な一節です。
この言葉は、顧客は商品を欲しているのではなく、問題を解決したいのだという事実を明確に示しています。
先の記事でも、企業(営業担当者)は顧客の持つ問題をまず認識しなければならないと書きました。
実は、これと併せて集客の最大化で重要になるのは、「問題を売る」という発想です。
それは、たとえ顧客にとってある問題が「未知」の問題であったとしても、潜在的にその問題を有しているというケースが多数存在しているからです。
私が携わっている営業組織改革の分野においても枚挙にいとまがありません。
特に法人営業現場においては、前年まで好調な営業実績を挙げていても、突如として不調に陥るという現象がたびたび発生します。なぜなら、市場には常に「競合他社」が存在しており、自社製品サービスを上回る条件・性能を要した新たな製品・サービスが供給されてくるからです。
好調時において、競合他社からの新製品サービスの投入による需要減少は「未知の問題」です。
しかし、潜在的には顧客側に「不満」があるからこそ、競合他社からの新製品サービス投入がきっかけとなって、突如業績不振に陥るわけです。
弊社としては、こうした好調企業にとっては「未知の問題」を、実際起こりうる「問題」として認識できるよう説得し、気付いていなかったリスクを認めてもらうことも仕事なのです。
「問題を解決したい」という欲求は、既に顕在化した問題ですが、まさに潜在化している課題を認識してもらうための情報を提示し、説得していくこと。これこそ集客の最大化にとって必要不可欠な行動のひとつと言えるでしょう。
2013年11月23日
クロージングの歩留り向上(営業プロセスを数値化する)
これまで検討してきた集客によって「顕在化」に成功した顧客を、取りこぼすことなく「顧客化」することが、将に営業の腕の見せ所です。集客の最大化でも述べましたが、「トップセールスが教える・・・」的な書籍は、まさにこの部分のノウハウを提供しているわけです。
しかし、個人の営業担当者の場合、実のところ自分自身の「弱点」を明確に特定できていることはほとんどありません。なぜなら「営業記録」が存在しないからです。
いや営業記録は当然あるよと反論があるかもしれませんが、ここでいう営業記録とは、何も売上数値ではありません。その数値が最終的に作られる過程の「記録」のことを指しています。
以下の表は、「集客」によって顕在化された案件をスタート地点として、最終的な「売上」に至る過程が数値化されたものです。
これを見ると、どこが自分自身の最大の弱点かを、端的に数値で示すことが出来ます。
クロージングの歩留まり向上
こうなればこちらのものです。その弱点を改善すれば良いだけですから・・・
ただし、ここで第二の躓きが待っています。それは、誰がこの弱点の改善策を提示してくれるのか?という問題です。
この問題を解決するためには、営業部門全体でこうした「営業記録」を捕捉しておかなければなりません。なぜなら、誰がその部分が得意なのかということも把握できるからです。そうなればしめたもの。
社内で勉強会を開いて、その営業担当者を「先生」に仕立て上げてしまえばいいわけです。
話す側も自分の得意分野を認識、そして整理できる良い機会になりますし、聞く側も真剣になれます。
クロージングとは確かにテクニックの問題かもしれませんが、実は、その技術が必要かどうかを特定することの方が大切なのです。
2013年11月14日
クロージングの歩留り向上(組織改善と個人改善とどちらを優先すべきか?)
クロージングの歩留り向上(営業プロセスを数値化する)では、「集客」によって顕在化された案件が、最終的な「売上」に計上されるまでの歩留りを数値化することで、営業担当者ごとの強みと弱みを数値することが出来ることを明らかにしてきました。
しかし、ここで問題になるのは、営業組織としての課題改善を優先すべきか、それとも営業担当者個人の課題改善と、どちらを優先すべきかということです。
下の図にもあるように、営業担当者個人個人の課題はそれぞれ異なります。
しかし、営業組織全体で見れば、今解決しなければならない課題は1点に絞られます。
結論から言えば、営業組織としての課題改善を優先すべきです。
なぜなら、顧客が「営業担当者」に求めるものは、製品の販売ではなく企業レベルでの問題解決能力です。
担当者の個人的な信頼関係をベースとした営業活動では、企業間競争に勝ち残ってはいけません。
そもそも、営業活動を記録することは、営業組織全体としての課題を明確にするために実施するものであって、改善すべき課題は「組織」としての課題なのです。
企業組織としての課題を解決することとは、つまり、顧客に対して企業レベルでの営業品質を保証することに繋がります。
もし営業担当者個々人の課題改善を優先してしまえば、結果的に営業品質はバラバラのまま放置されることになります。
また、バラバラの課題を、数人のマネジメントで改善することは物理的に困難です。
マネジメントや現場営業担当者の経験を、ひとつの課題改善に集中させることで、高品質な問題解決能力を、顧客に提供することが出来るようになるのです。
2013年11月18日
流出顧客の最小化
営業を大きな流れで捉えると、「集客」「クロージング」「顧客フォロー」の三段階のプロセスで構成されています。
営業力強化とは、この3つの段階において、「集客」数と「クロージング」率を最大化させ、かつ「顧客フォロー」によって流出顧客を最小化することです。
ここからは、流出顧客を最小化させるためにはどうすべきかについて検討していきたいと思います。
既に既存顧客となった顧客が、流出してしまうとはどういった事態なのでしょうか?
具体的には、二つの場面が考えられます。
ひとつには、その商品サービス自体が必要でなくなった場合。
そしてもうひとつは、その商品サービスに代わる何かが現れた場合です。
先の、商品サービス自体が必要でなくなるケースは、顧客自体が倒産して会社をたたんでしまうことも考えられますし、全く新しい商品サービスに取って代わられるケースがあります。
例えば昔はポケベルが一世を風靡しましたが、現在では携帯電話にその座を完全に奪われてしまいました。
これらは「営業」がコントロールできる範囲の問題ではありませんので、ここでは特に触れません。
問題は後者の、その商品サービスに代わる何かが現れた場合です。
つまり、競合他社との競争ということです。
取扱商材が、既製品であろうがカスタマイズ製品であろうが、競合他社は存在します。
この競合に顧客を奪われる事態こそが、顧客流出であり、それを最小限に食い止めることが、営業にとって極めて重要な役割でもあります。
ここで必要となるのは、常に顧客側の自社に対する評価を確認しておくことです。
流出顧客の最小化
上記の表は、顧客が、競合他社と自社をどのように評価しているかについて、企業・営業担当者・総合評価に分類した表になります。
ここに掲載している表は、大項目として集計したものですが、それぞれに詳細な評価項目が設定されています。
こうした評価票を用いて、常に顧客からの自社に対する評価、そして競合他社との相対評価を確認することで、自社の強み弱みをチェックすることが出来るのです。
当然、こうした確認を常時行うことによって、顧客が自社に対して感じている課題に対して、具体的に改善することが可能となりますし、その改善こそが競合流入を防ぐ(流出顧客の最小化)ことに直結するわけです。
営業現場では、「売る」ことにウエイトをかけがちですが、顧客フォロー(保全活動)も極めて重要な仕事なのです。
2013年11月19日